半導体チップパッケージの剥離解析|デラミネーションの原因・対策と検査方法

半導体チップパッケージの内部では、外観に異常がなくても樹脂とチップの界面が剥がれていることがあります。その剥離が故障の原因なのか、故障後に生じた結果なのかを見分けるには、画像だけでなく発生条件と電気特性を照合する必要があります。この記事では、デラミネーションの原因と対策、超音波による検査、断面解析、受託分析の比較と費用の考え方を、実務の流れに沿って整理します。

デラミネーションの原因と対策は界面ごとに考える

剥離解析の出発点は、「どこが剥がれたか」を材料の組み合わせで表すことです。半導体パッケージには、チップ、接着材、封止樹脂、配線基板、金属部材などの異なる材料が含まれます。チップと接着材の間、封止樹脂と金属の間、アンダーフィルと基板の間では、想定すべき原因も、故障への影響も異なります。単に「樹脂内部に異常がある」と記録するより、対象界面と広がり方を特定したほうが、製造工程との対応を取りやすくなります。

代表的な要因は、熱膨張の差、吸湿、界面の汚染、接着や硬化の不適切な条件です。異なる材料は温度変化によって伸び縮みする量が違うため、界面に繰り返し応力がかかります。吸湿したパッケージでは、リフロー加熱による水分の気化が内部応力を増やし、既存の弱い界面を開かせる場合があります。ただし、リフロー後に剥離が見つかったという事実だけで、吸湿が原因と断定することはできません。

接合前の表面に油分、洗浄残渣、酸化物などが残ると、見かけ上は接着していても界面強度が不足することがあります。接着材の塗布不足や気泡の巻き込み、硬化条件のばらつきも調査対象です。一方、硬化収縮やパッケージの反りが応力を集中させ、端部から剥離を進めることもあります。発生位置がいつも同じなら、材料だけでなく形状や応力集中の影響も検討します。

対策は原因に対応させます。吸湿が関係するなら保管・乾燥・実装条件、汚染なら洗浄と表面管理、硬化不良なら温度履歴と材料の取り扱い、熱応力なら材料特性や構造を見直します。条件変更後は、初期状態で剥離が消えたかだけでなく、想定する温度履歴や環境負荷を経ても再発しないかを確かめます。剥離面積を減らすことと、製品の信頼性を確保することは、同じ判定ではありません。

デラミネーションの検査方法は非破壊から組み立てる

不良品をすぐに切断すると、原因を示す証拠まで失うことがあります。基本となる流れは、履歴確認、外観観察、電気特性の取得、非破壊検査、必要な箇所の破壊解析です。ただし、試料の状態や安全性によって順序を調整する必要があります。重要なのは、各工程で「何を確認したいか」と「次の工程で失われる情報は何か」を明確にすることです。

最初に記録するのは、不具合の症状、発生した工程、温度や湿度への曝露、実装条件、保管状態です。同じ製造条件の正常品や、負荷を与える前の試料があれば、比較によって異常の意味を判断しやすくなります。電気測定では、断線、短絡、漏れ電流、特性変動などを区別し、どの端子や回路に異常があるかを整理します。測定条件も記録しないと、解析前後の変化を正しく比較できません。

試料の取り扱いも解析の一部です。剥離は加熱、乾燥、吸水、機械的な押さえつけによって状態が変わる可能性があります。受領後に一律のベーキングや洗浄を行うと、受領時の状態を確認できなくなる場合があります。まず外観や保管履歴を記録し、処理が必要なら目的と影響を検討したうえで実施します。

検査計画では、「封止樹脂とチップの界面に異常があるか」「接合部の金属構造が変形しているか」「剥離が電気的不良の位置と一致するか」のように問いを分けます。界面の開きを調べる方法と、配線や接合部の形状を調べる方法は同一ではありません。問いに応じて観察手段を選ぶと、不要な測定を減らしながら、断面加工の位置も絞り込めます。

超音波探傷による半導体の剥離検査で分かること

走査型超音波顕微鏡の強みは、材料の境界から戻る反射を使って、内部の界面異常を面として捉えられることです。一般にSAMと呼ばれる装置では、探触子から超音波を送り、戻ってきた信号の強さや到達時間などを取得します。材料間で音響的な性質が変わると反射が生じ、空気を含む隙間では周囲と大きく異なる応答が現れます。この性質が、樹脂とチップの間などに生じた剥離の検出に役立ちます。

観察には、特定の深さに対応する時間範囲の信号を取り出す方法が使われます。これにより、表面近くの界面と、より深い界面を分けて評価できます。ただし、多層構造では複数の反射が重なったり、途中の強い反射によって深部の情報が弱くなったりします。設定した時間範囲が目的の界面に合っているかを、波形とパッケージ構造から確認する必要があります。

探触子の周波数を高くすると、一般に細かい構造を見分けやすくなる一方、材料中での減衰が大きくなり、深部を観察しにくくなります。低い周波数は深い場所への到達に有利ですが、小さな異常の分離には限界があります。したがって、周波数の高さだけで装置や測定条件の良し悪しは決まりません。封止材の厚さ、内部構造、対象界面の深さに合わせて選定します。

多くの測定では、水などの媒質を介して超音波を試料へ伝えます。水への浸漬が許容できるか、開口部から液体が入り得るか、吸湿によって後続試験に影響しないかは事前の確認事項です。電気的不良の再現性を調べたい試料では、浸漬前の測定結果が重要になります。非破壊検査という名称であっても、試料をまったく変化させないとは限りません。

剥離検査での超音波顕微鏡・X線・X線CTの使い分け

界面の剥離を見たいときと、金属接合部の形状を見たいときでは、適した検査が異なります。超音波顕微鏡は、アンダーフィルや封止樹脂に関係する界面の状態を評価する有力な手段です。X線は、材料による透過量の違いを利用し、内部配線、はんだ接合部、金属構造などを観察します。どちらか一方を万能な方法として扱うより、異常の種類に合わせて役割を分けるほうが合理的です。

平面のX線画像では、奥行き方向の構造が重なって投影されます。そのため、複数の接合部が重なる場所や、複雑な配線の近くでは、異常の位置を読み取りにくい場合があります。X線CTは複数方向の投影情報から断層像を再構成するため、内部構造の立体的な位置関係を調べるのに役立ちます。ただし、金属に起因する画像の乱れや、試料サイズと分解能の制約は残ります。

薄い剥離がX線で必ず見えるわけではありません。隙間の厚さが小さく、材料の透過差も乏しい場合は、画像上の変化が十分に得られないことがあります。逆に、超音波で異常が見つかっても、その領域にある微細な配線の変形や接合形状まで明確に判断できるとは限りません。検出できなかったことと、欠陥が存在しないことは区別する必要があります。

両者を組み合わせる際は、同じ位置を対応付けられるように試料の向きと座標を管理します。超音波画像の異常領域を、X線CTで得た接合部や基板構造と重ねて考えると、断面で観察すべき場所を具体化できます。組み合わせの価値は、画像を増やすことではなく、各方法で得た情報を使って一つの仮説を検証できることにあります。

デラミネーション検査でよくある誤解と画像の読み方

超音波画像に明るい領域や特定の色が現れても、それだけで剥離とは断定できません。表示色は、信号の振幅、極性、到達時間など、何を画像化したかによって意味が変わります。装置や表示設定が異なる画像を、色だけで比較するのは危険です。判定には、元の波形、対象界面の位置、正常品との違いを組み合わせます。

「剥離とボイドは同じか」という疑問もよくあります。剥離は本来接合している界面が離れた状態を指し、ボイドは材料や接合部の内部に存在する空隙を指します。ただし、界面にある空隙は超音波画像だけでは区別しにくい場合があります。断面観察や製造履歴を併用して、界面の接着不良なのか、材料内部への気泡混入なのかを検討します。

剥離の面積だけで合否を決めることにも注意が必要です。同じ広さでも、配線や接合部の近くにある剥離と、機能への影響が小さい位置にある剥離では意味が異なります。判定には対象製品の要求仕様、適用する規格、評価条件を使い、根拠のない共通しきい値を設定しないようにします。面積を数値化する場合も、対象界面、分母となる領域、画像の抽出条件を固定する必要があります。

また、電気特性が正常でも剥離が存在することはあります。剥離は潜在的な劣化要因となり得ますが、その時点で必ず断線や短絡を起こすとは限りません。反対に、電気的不良がある試料で剥離が見つかっても、直接の原因は別の箇所にある可能性があります。「画像上の異常」「故障との対応」「原因の確からしさ」を分けて記述することが、過剰な断定を防ぎます。

半導体の故障解析で剥離界面を断面観察する方法

断面観察は、非破壊画像で絞った異常を、材料と界面の実像として確認する工程です。切断位置が少しずれるだけで局所的な剥離を外してしまうため、画像上の座標と試料上の目印を対応付けます。異常の中心だけでなく、正常領域との境界を含む位置を選ぶと、剥離の進展方向や材料の違いを検討しやすくなります。可能であれば、比較用の正常品も同様の条件で観察します。

機械研磨では、材料の硬さの違いによって段差が生じたり、樹脂が引きずられたりする場合があります。弱い界面が加工時に開き、元からあった剥離より大きく見えることもあります。逆に、研磨の影響で隙間が埋まり、異常が見えにくくなる可能性もあります。断面に隙間が見えたという事実だけでは、実使用中の状態を完全に再現したとは言えません。

イオンミリングは、イオンを用いて表面を加工し、機械的な負荷を抑えながら観察面を整える方法です。材料の境界や微細な構造を確認する際に役立ちますが、加工条件によって発熱や選択的な削れ方の違いなどが生じるため、無条件に損傷がないわけではありません。目的に応じて機械研磨と組み合わせ、加工前後の状態を比較します。観察方法の選択も、材料と確認したい現象に合わせて行います。

断面の形状に加え、必要に応じて成分や表面状態を調べると、接着不良の背景を検討できます。ただし、元素分析で有機汚染の種類まで特定できるとは限りません。また、樹脂包埋などの前処理が分析対象に影響する場合もあります。何を検出したいかを先に決め、形態観察用と化学分析用で試料を分けることも選択肢です。

超音波顕微鏡のメーカー比較は試料への適合性で行う

装置を比較するときは、カタログ上の最高性能より、対象パッケージで必要な情報が得られるかを重視します。確認項目は、使用できる探触子、焦点位置の調整範囲、走査範囲、試料保持方法、波形の保存機能、深さごとの画像化機能などです。厚い封止材の深部を見たい用途と、浅い位置の微小な剥離を見たい用途では、優先順位が変わります。

測定の再現性には、位置決めや焦点調整、試料の傾き、温度管理も関係します。画像を高精細に取得できても、条件を保存できなければ、ロット間の比較や負荷前後の評価が難しくなります。元の波形を保持できるか、解析条件を後から確認できるか、同じ領域を再測定できるかは、原因調査を目的とする設備で確認したい点です。

処理速度の比較では、試料全体の粗い走査と、異常部の詳細走査を分けて考えます。速度は走査範囲、測定間隔、取得する情報量などに左右されるため、異なる条件の数値をそのまま比べても意味がありません。実際の試料や近い構造の評価用試料で、観察可能な深さ、異常の見え方、測定時間をそろえて確認するほうが有用です。

メーカー名だけで品質を判断することも避けます。装置の性能に加え、校正や点検の考え方、探触子の管理、解析ソフトの扱いやすさ、保守体制が長期的な運用に影響します。日常検査が目的なのか、少数の不良品を詳しく調べるのかによっても、必要な機能は違います。比較の前に用途と判定基準を定義すると、過剰な仕様や不足する機能を見分けやすくなります。

走査型超音波顕微鏡の受託分析と半導体故障解析の比較

受託先の比較では、「測定して画像を出す業務」と「故障原因を検討する業務」を区別します。前者は指定界面の画像取得や面積評価が中心で、後者は電気的不良との対応、複数手法の照合、原因仮説の検証まで含み得ます。依頼範囲が曖昧だと、画像は得られても判断に必要な情報が不足します。最初に、知りたいことと報告書に必要な内容を具体化します。

設備の確認では、走査型超音波顕微鏡の有無だけでなく、対応できる試料寸法や材質、探触子の選択肢、X線や断面観察との連携を見ます。外部に再委託する工程がある場合は、試料の受け渡し、座標の引き継ぎ、機密管理の方法も確認対象です。装置がそろっていても、複合材料の界面を扱う経験や解析の設計能力は別に評価する必要があります。

判定の管理体制も重要です。正常品との比較方法、異常候補を抽出する基準、測定条件の記録、複数担当者による確認、判定できない場合の扱いを確認します。画像の見え方には条件依存性があるため、単に「剥離あり」と記載するより、根拠と不確かさが示された報告のほうが実務に役立ちます。規格への適合判定を求める場合は、適用範囲と判定責任も明確にします。

試料の破壊や追加加工については、承認が必要な段階を決めておきます。非破壊検査で位置を絞った後に、どの試料をどこで切断するかを再検討できる体制が望まれます。報告書では、試料識別、測定条件、対象界面、観察結果、解釈、残る課題が区別されているかを見ます。確認された事実と推定原因を分ける姿勢は、受託先の比較で有用な判断軸です。

走査型超音波顕微鏡の費用と半導体故障解析の費用の内訳

費用を左右するのは、試料数だけではありません。測定条件の開発、観察する界面の数、試料の大きさ、必要な分解能、画像解析の内容、報告書の範囲によって作業量が変わります。定型条件での画像取得と、未知の構造に対する測定条件の検討は、同じ作業ではありません。そのため、一試料当たりの金額だけを比較すると、業務範囲の違いを見落としやすくなります。

走査型超音波顕微鏡の測定では、試料固定、焦点調整、複数条件での確認、異常部の再走査、面積の算出などが費用要因になります。半導体の故障解析全体では、これに電気測定、X線観察、断面加工、成分分析、結果の統合が加わる場合があります。観察画像だけを必要とするのか、原因仮説と対策検証まで求めるのかを分けると、費用の構成が理解しやすくなります。

費用比較には、同じ依頼条件を使います。試料数、対象界面、必要な保存データ、正常品との比較、追加解析の条件、報告形式、試料返却の扱いをそろえることが基本です。価格が低く見えても、条件設定や詳細報告が別扱いなら、総費用は変わります。個別の金額は試料と業務範囲によって異なるため、一般的な一律料金を前提にしないほうが適切です。

無駄を減らす方法は、検査を段階化することです。まず非破壊検査で異常の位置と分布を確認し、その結果を使って追加工程を選びます。代表試料で条件を決めてから残りを測定する方法もありますが、構造や材料が異なる試料まで同じ条件で評価しないよう注意します。費用を抑えるために必要な比較試料や記録を省くと、かえって原因判断が難しくなることがあります。

剥離解析の結果を原因対策へつなげる実務手順

解析を始める前に、対象界面、故障症状、発生工程、比較試料、試料に許容できる処理を一枚の計画にまとめます。「剥離の有無を確認したい」のか、「特定の電気的不良との関係を確認したい」のかを明確にするだけでも、検査の選び方は変わります。判定基準があるなら、その適用条件も併記します。基準がない場合は、まず正常品との差と観察の限界を明らかにします。

測定後は、異常の位置、形状、広がり、電気的不良との対応を整理し、考えられる原因を絞ります。たとえば端部に偏った剥離なら応力集中を、製造条件の違いで分布が変わるなら接着や硬化条件を検討する手掛かりになります。ただし、位置や形状は原因の証明ではありません。工程記録、材料情報、再現試験と照合して仮説を確かめます。

対策の評価では、変更前後の試料を同じ観察条件で比較し、想定する使用環境に対応した負荷後も確認します。画像上の改善、電気特性の改善、再発の有無を別々に記録すると、対策の効果を説明しやすくなります。半導体チップパッケージの剥離解析は、異常画像を得て終わる作業ではありません。非破壊検査で証拠を保ち、必要な断面解析で裏付け、工程と材料の対策までつなげることが実務上の要点です。